風営法に関する基礎知識や事例

Basic knowledge and Examples

■風営適正化法(風営法)の対象営業と規制構造
風営法の対象営業は,「風俗営業」(これには「接待飲食等営業」の他,パチンコホール、マージャン店及びゲームセンターが含まれます。)並びに「性風俗関連特殊営業」,「特定遊興飲食店営業」及び「接客業務受託営業」に区分されます。

許可制の風俗営業のうち,「接待飲食等営業」としては,バーであれば接待を伴うもの,照明照度が一定以下のもの,他から見通せない客室を設けるものはそれぞれ別の営業種別として許可を受けなければなりません。同じバーでも,これらに該当しなければ許可も届出もいりませんが,営業時間が深夜(午前0時~午前6時までの時間帯)に及ぶ場合には「深夜における酒類提供飲食店営業」として届出が必要になります。
また,接待を伴うキャバレーやナイトクラブは「接待飲食等営業」として風俗営業の許可を受けることが必要となりますが,接待を伴わないナイトクラブでは許可も届出もいりませんが,営業時間が深夜に及ぶ場合には,「特定遊興飲食店営業」として,風俗営業とは別の許可を受けなければなりません。
このように,風営法の対象業種は,些細な違いで許可が必要となったり,届出だけで済んだり,許可も届出も不要であったりして境界が曖昧です。このため,営業努力としてのサービス内容の追加・変更や,営業所の模様替え等が違反に直結する場合があります。
また,許可制の「風俗営業」や「特定遊興飲食店営業」は,営業所の構造設備の変更には原則として公安委員会の事前の承認が必要となります。パチンコホールの遊技機の入替えや修理も同様です。

■風営法の具体的な違反事例
以下に具体的な違反事例を挙げます。

〇無許可営業
許可も届出も不要のガールズバーで,カウンター内の女性を指名できるシステムを導入したため,風俗営業である「接待飲食店営業」の無許可営業として経営者が逮捕された事例があります。
また,バーの一角にピンボールマシン(フリッパーゲーム機)を設置し,その設置面積(但し,1.5㎡以上)が店舗の10%を超えていたため,「風俗営業」であるゲームセンターの無許可営業とされた事例があります。
バーは接待を伴う場合等には「風俗営業」の許可が,深夜営業する場合には届出が必要です。しかし,「風俗営業」は午前0時~6時の深夜営業が認められていませんので,許可制の接待飲食店営業としてのバーは午前0時までに閉店し,それ以降は,客を入れ替えて届出制の「深夜における酒類提供飲食店営業」として営業しなければなりません。
また,許可・届出のなされた営業所内で他の種別の風俗営業の許可を受けることはできませんので,許可・届出不要の営業形態のバーであれば,ゲームセンターとしての「風俗営業」の許可を受けることはできます。アミューズメント・ポーカーやプール・バーには,このパターンで営業をしている例が多いようです。
なお,デジタルダーツやシミュレーションゴルフは平成30年10月から,「風俗営業」の許可の対象外となっております。
無許可営業の行政処分の量定は「A」で,営業許可の取消しとされ,刑事罰は2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金又はこれらの併科とされています(風営法49条1号)。

〇名義貸し
例えば,接待を伴うバーのオーナーが,第三者に店を貸すと,名義貸しになります。
パチンコホールのオーナーが,コンサルタントに業務を一任する場合も名義貸しとなります。
名義貸しの行政処分の量定も「A」で,営業許可の取消しとされ,刑事罰は2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金又はこれらの併科とされています(風営法49条3号)。

〇無承認変更
特にパチンコホールの遊技機の変更(入替だけではなく修理もこれに含まれます。)には公安委員会による承認が必要ですが,作り付けの家具の設置・撤去や,故障した遊技機を別の遊技機から取ったパーツと交換することや,パチンコ遊技機のくぎ曲げも無承認変更となります。特にくぎ曲げによる無承認変更は多くの摘発事例があります。
無承認変更の行政処分の量定は「A」で,営業許可の取消しとされておりますが,事案が悪質ではなければ,6か月の営業停止で済む例も多く存します。しかし,些細な釘曲げでも6か月もの長い期間の営業停止となってしまうということは,非常に厳しいペナルティであるといわざるを得ません。なお,刑事罰は1年以下の懲役若しく100万円以下の罰金又はこれらの併科とされています(風営法50条1号)。

以上のように,風俗営業者の場合,風営法違反によって許可の取消しや営業停止といった行政処分が課され,また,別途,懲役・罰金という刑罰が科されることになります。
行政処分としての許可取消しを受けると風俗営業者としての欠格事由となり,違反をした営業所以外の全営業所の許可が取り消される結果となります。
許可取消しを受けなくても,役員,従業員が例えば無承認変更で風営法違反として罰金刑以上の刑を受けた結果,両罰規定により法人にも罰金刑が科されますと,やはり風俗営業者としての欠格事由となり,全営業所の許可が取り消される結果となります。

最優先の課題は,風営法に抵触しないようにコンプライアンス体制を確立する以外にはないのですが,万が一風営法違反で摘発された場合,
行政処分を軽減するために,事後的にでも有利な情状を積み上げて,警察当局に積極的にアピールする。このことが刑事処分にも影響する。
違反を実行した当事者である従業員等について不起訴となるように弁護活動を展開する。
従業員等が罰金刑以上に処せられることが決まったら,両罰規定により法人が罰金刑に処せられないように(不起訴となるように)徹底的な弁護活動を展開する。
ということになります。
特に,警察当局へのアピールとしては,
ⅰ)営業者(法人にあっては役員)の関与が殆どなく,かつ,違反を防止できなかったことについて過失がないと認められること
ⅱ)他に違反がないこと
ⅲ)反省の色が顕著であること
ⅳ)具体的な改善措置を自主的に行っていること
このような対応を適時効果的に実行するために,弁護士に依頼する必要性があるのです。

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三堀 清

(みほり きよし)

弁護士の存在意義は、法律的紛争の予防・回避と、
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私どもは、一般民事・刑事事件の分野並び企業法務及び取引に関する分野での経験に裏打ちされた専門性と新しい法律問題にも斬新な手法をもって挑戦する柔軟性を武器に、迅速な対応により、依頼者の方々に結果をもってお応えすることを使命として、日々実務を通じた研鑽を進めております。

所属
  • 第二東京弁護士会
経歴
  • 昭和32年 生まれ
  • 昭和56年 早稲田大学法学部卒業
  • 昭和60年 司法試験合格平成8年
  • 早稲田大学大学院法学研究科(企業法務専攻)修了
  • 平成9年 港区新橋に三堀法律事務所設立
  • 平成14年 三洋投信委託㈱(現プラザアセットマネジメント㈱)監査役就任(平成16年まで)
  • 平成15年 千代田区有楽町に事務所を移転
  • 平成17年 ㈱ニチリョク監査役就任(平成29年まで)
  • 令和6年 三堀法律事務所が丸ビル綜合法律事務所と合併

事務所概要

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所在地 〒100-6311
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