企業法務に関する基礎知識や事例
Basic knowledge and Examples
■企業法務の基礎知識
企業法務とは,事業主体が企業活動を行う上で発生する一切の法律問題を対象領域としますが,どのような場面で,どのような役割を担うのかという点については,「臨床法務」,「予防法務」そして「戦略法務」という分類がなされています。
第一に,「臨床法務」とは,企業で発生した法的な問題に,事後的に対処することです。
これは,企業活動に伴って事件や事故~それ自体が法令違反に起因すると共に第三者に損害を与えてしまう場合も多い~や契約違反が発生した場合に,刑事上・行政上のペナルティや,民事上の損害賠償等に対応するという,いわば「後始末」です。
当事務所においては,「臨床法務」について,単なる「後始末」に終わらせることなく,これらの発生原因を早期に特定して除去するといういわば外科的な対処を重視すると共に,再発予防策の策定といういわば内科的な後述の「予防法務」の手法を組み合わせることにより,法的なペナルティを軽減することに結びつけます。
また,このような手法の組み併せは,企業の不祥事といわれる事案,すなわち企業犯罪及びその他の企業活動に伴う法令違反が発生した場合の対外的なイメージ低下を最小限に抑えるために不可欠であるといえます。
第二に,「予防法務」とは,企業に法律問題が発生しないように未然に防止することです。
企業の事業活動は,ルール(事業活動を規制する法令等)と約束(取引の相手方との契約)が守られていれば円滑に遂行されます。
しかし,事業活動の当事者が法令等の定めよりも慣例や我流のやり方にこだわったり,そもそも法令等の知識に乏しかったり,約束(契約)よりも目先の利益を優先したり,当事者間で約束の解釈について齟齬が生じたりした場合,トラブルが生じます。
法律問題の発生を予防するには,事前に法令等のルールを確認したうえ組織内に周知し,ルール違反に結びつきそうな事由を発見したときは早期に是正する必要があり,また,契約締結に先立ち契約書の案の段階でこれを精査し,一方的に不利な条項や法令違反が疑われる条項を削除するだけではなく,解釈の齟齬が生じそうな条項を明確化する等の修正が必要です。
第三に,「略法務務」ですが,これは利益の最大化・経営の効率化のために,法律知識や法令を活用することを意味します。
先述の「臨床法務」及び「予防法務」はいずれも法的なリスクの軽減・回避を目的とするものですが,「戦略法務」は誤解を恐れずにいえば,「法律を使って金儲けをする」ことです。
例えば,利益を圧縮してキャッシュフローを生み出すために高額な資産を購入して減価償却後に益出しに有利な時期に売却する,自社の眠っている特許権を使って類似製品を製造する他社に対する損害賠償や使用許諾料の請求をする,労働者との労働契約の内容を調整して助成金や補助金を最大限受給する等が挙げられます。
「戦略法務」は企業の経営判断そのものですので,当事務所は,その立案等に関与する立場にはないと考えておりますが,具体的なスキームが立案されたのちの法的なリスクの検証という形で,いわば予防法務の見地から戦略法務に関与することがあります。
■企業法務の具体的対象領域
企業法務の具体的な妥当領域は,企業内部で生じる問題と企業外部との関係で生じる問題に大きく分けられます。
企業法務の対象領域のうち,企業内部で生じる法律問題としては,組織運営上の問題,人事労務問題及び支配権争いの問題=内紛が挙げられます。
企業内部で生じる法律問題の第一の組織運営上の問題は,株式会社における株主総会・取締役会運営,その他の法人等における総会・理事会運営等という運営上の問題がメインですが,組織変更すなわち合併,会社分割及び事業譲渡という問題もあります。
第二の人事労務問題は,労働条件や解雇等を巡る労働事件,セクシャルハラスメントやパワーハラスメントといった問題があります。
第三の支配権争いの問題=内紛は,例えば創業者の死後,株式を相続した子らの間で会社の経営権を巡って争ったり,株主の一部が会社資産(特に内部留保)を我がものにしようとしたり,中には,持株を第三者に譲渡して「会社荒らし」をさせる等により第三者が介入することもあります。
企業の支配権争いは,最終的には持ち株数の多寡によって決着せざるを得ず,多くの場合,その着地点は,多数派株主が少数派株主の保有株式をしかるべき価格で買い取るか,事業の一部や資産の一部を少数派株主に割譲するという着地点に至りますが,そこに至るまでの間,多くの場合,株主としての権利がツールとして利用され,例えば,株主総会招集請求権(会社法297条),株主提案権(同法303条),取締役の違法行為差止請求権(同法360条)及び帳簿閲覧請求権(同法433条)が行使されたり,株主総会決議取消訴訟(同法831条),役員に対する責任追及訴訟(株主代表訴訟)(同法847条)及び役員解任請求訴訟(同法854条)が乱発され,紛争は複雑な様相を呈します。
企業法務の対象領域のうち,企業の外部的な活動に関して生じる問題としては,取引の相手方との問題と,企業自身の事業活動の方法や内容が問題とされる法律問題があります。
企業の外部的活動に関して生じる問題の第一は,取引の相手方との問題で,約束された商品やサービスが提供されなかったり対価が支払われないという債務不履行・契約不適合等の問題と,取引の内容等を定めた契約の解釈に齟齬が生じたり,契約書に記載のない,想定外の事態が発生するという問題です。
ところで,前者の債務不履行・契約不適合等の問題は,最終的には金銭の授受で解決せざるを得ない場合が殆どあり,これは,要するに,金銭債権の回収という問題に還元されるということになります。
後者の契約の解釈の齟齬や想定外の事態への対策としては,契約書の作成段階から弁護士に相談し,事前にチェックをさせることが不可欠です。
尤も,契約書は取引の相手方との合意内容そのものの反映ですから,自己(自社)の思い描くような内容にはならない場合が多く,特に,取引上の力関係(企業規模の大小ばかりではなく,需要と供給のバランス)から,相手方の意向に押し切られてしまう場合も少なくありません。
しかし,契約書の起案段階で,特に取引の相手方から契約書案を提示して来た場合,そこに,取引の相手方の真実の姿を窺い知ることは容易です。例えば,契約書案の記載内容からある法律分野の無知であることが明らかになることは一定の確率でありますし,一方的に厳しい条項や通常ない条項を盛り込んで来たことから企業としての弱点が浮き彫りになることもあります。
このような,契約書の作成段階から,社内的なチェックと共に,弁護士にもチェックさせることはこのような,一種の副産物もあり,将来的なトラブルの予防とトラブル発生時の対応に資するのです。
問題の第二は,企業自身の事業活動の方法や内容が問題とされる法律問題です。
これは,企業活動が,取引の相手方とは一応円滑に進展していても,結果として,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独禁法)や不正競争防止法に違反していたり,或いは,先述した風営法や廃棄物処理法その他の所謂業法に違反している場合です。
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三堀 清
(みほり きよし)
弁護士の存在意義は、法律的紛争の予防・回避と、
発生した紛争の早期解決の実を挙げることに尽きます。
私どもは、一般民事・刑事事件の分野並び企業法務及び取引に関する分野での経験に裏打ちされた専門性と新しい法律問題にも斬新な手法をもって挑戦する柔軟性を武器に、迅速な対応により、依頼者の方々に結果をもってお応えすることを使命として、日々実務を通じた研鑽を進めております。
- 所属
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- 第二東京弁護士会
- 経歴
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- 昭和32年 生まれ
- 昭和56年 早稲田大学法学部卒業
- 昭和60年 司法試験合格平成8年
- 早稲田大学大学院法学研究科(企業法務専攻)修了
- 平成9年 港区新橋に三堀法律事務所設立
- 平成14年 三洋投信委託㈱(現プラザアセットマネジメント㈱)監査役就任(平成16年まで)
- 平成15年 千代田区有楽町に事務所を移転
- 平成17年 ㈱ニチリョク監査役就任(平成29年まで)
- 令和6年 三堀法律事務所が丸ビル綜合法律事務所と合併
事務所概要
Office Overview
| 名称 | 丸ビル綜合法律事務所 |
|---|---|
| 所在地 | 〒100-6311 東京都千代田区丸の内2-4-1 丸の内ビルディング11階1111区 |
| TEL/FAX | TEL:03-3201-3604 / FAX:03-6206-3392 |
| 受付時間 | 平日 9:00~18:00(事前予約で時間外も対応可能です) |
| 定休日 | 土日祝、年末年始(事前予約で休日も対応可能です) |
| アクセス | 東京駅,二重橋前駅から徒歩2分 |
