債権の時効は5年?10年?時効の更新はできる?
債権は決まった期間に請求をしないと,時効によって消滅してしまいます。
債権の時効を正しく知ることや,時効期間を延長できるケースについて把握することは債権の管理の基本です。
今回の記事では、債権の時効や,時効期間を延長できるケースについて解説します。
債権とは
債権とは、対象となる人=自然人や法人(会社や社団・財団法人)等に対して,一定の給付(金銭の支払いや物の引渡し等)や行為(サービスの提供等)といった履行を請求できる権利(請求権)のことをいいます。
しかしながら,制度上,債権は一定期間内に行使しないと失効してしまいます。
そのため,ある程度の期間行使せずに放置していた債権があるときは,速やかに法律事務所に相談することをお勧めします。
債権の消滅時効期間
消滅時効は,一方で長期間にわたり権利行使を怠る債権者は保護に値しない,他方で長期にわたり権利行使がない状態が続いたのであればその状態を尊重すべきであるという考えが前提にあります。
そして,この債権の消滅時効期間は令和2年(2020年)4月1日から施行された改正民法により,それまでの原則10年から5年に短縮されてしまいました(同法166条1項)。
より具体的には,債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間,権利が行使できるようになってから10年間放置すると,時効消滅して行使するのです。
そのうえ,交通事故等の不法行為に基づく損害賠償請求は,被害者がその損害及び加害者を知った時から3年,不要行為の時から10年で時効消滅してしまいます(民法724条)。
時効期間が2つあるとややこしいのでは
先に述べたとおり,時効期間には5年間と10年間と2種類あり,ややこしいと感じる人がいるかもしれません。
一般的には,債権者は,権利を行使できるようになったことを知らないということはありません。
【具体例】
これに対し,レッスンプロのコーチからゴルフの指導を受けていたお金持ちの受講生が,自分がコンペでパープレイを成し遂げ,かつ優勝した暁には,コーチに100万円のボーナスを進呈するという契約をした場合を考えてみましょう。
実際,受講生が,コンペでパープレイを成し遂げて優勝したとして,受講生自らその事実をコーチに知らせるなりした時から,ボーナスの支払いがないまま5年が過ぎてしまうと,「権利を行使することができることを知った時から5年間」の経過により,コーチの100万円を貰える権利は時効消滅してしまいます。
しかし,受講生が,100万円が惜しくなって,パープレイで優勝した事実を隠してしまえば,コーチは「権利を行使するようになったこと」を知ることはできず,ボーナスが支払われないまま10年が経過すると,「権利を行使できるようになってから10年間」の経過によって,やはりコーチの100万円を貰える権利は時効消滅してしまいます。
時効の更新
では,消滅時効の進行を一時的に止め,時効期間を延ばしたりすることはできるのでしょうか。
これには,時効の「更新」と「完成猶予」があります。
先に,消滅時効の制度は,権利行使を怠る債権者は保護に値せず,また,一定期間続いた権利行使がなされない状態を尊重するという考えが前提にあると述べました。
しかるに,時効の「更新」は,権利の存在が改めて確認されたりした場合,進行を続けて来た時効を振り出しに戻す制度であり,「完成猶予」は,債権者が権利行使に着手した場合,結論が出るまで一時的に時効の進行を止める制度です。
そして,時効の「更新」及び「完成猶予」は,以下の場合に認められます。
- 裁判上の請求(民法147条)
訴訟の結果判決を得たり和解したり,支払督促手続や簡易裁判所でのいわゆる即決和解や裁判所での調停の成立,又は破産手続での債権届出により,債権の存在が公的に確定した場合,時効期間は「更新」されます。 - 強制執行(民法148条)
強制執行等の手続に取り掛かった場合,その手続終了後6か月間,「完成猶予」されます。 - 仮差押等(民法149条)
判決を得るまでの保全処分としての仮差押を申し立てた場合,その手続終了後6か月間「完成猶予」されます。 - 催告(民法150条)
「催告」とは債務者に対して履行を催促することで,催促をした時から1回だけ,6か月間に限り「完成猶予」されます。その間に取り立てるなり,そのための裁判を起こすなりしろ,ということです。 - 協議を行う旨の合意(民法151条)
裁判等を起こさなくても,債権者と債務者が債務の存在の確認や弁済に向けた協議をすることを書面により合意した場合,1年から6か月の期間「完成猶予」されます。 - 債務の承認(民法152条)
債務者が権利が存在すること(債務者の立場からすると,債務を負担していること)を認める承認をすると「更新」されます。
まとめ
以上の通り,時効については「更新」や「完成猶予」など があります。
正しく債権を請求するためにも法律事務所をはじめとした専門家への依頼をおすすめします。
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三堀 清
(みほり きよし)
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私どもは、一般民事・刑事事件の分野並び企業法務及び取引に関する分野での経験に裏打ちされた専門性と新しい法律問題にも斬新な手法をもって挑戦する柔軟性を武器に、迅速な対応により、依頼者の方々に結果をもってお応えすることを使命として、日々実務を通じた研鑽を進めております。
- 所属
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- 第二東京弁護士会
- 経歴
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- 昭和32年 生まれ
- 昭和56年 早稲田大学法学部卒業
- 昭和60年 司法試験合格平成8年
- 早稲田大学大学院法学研究科(企業法務専攻)修了
- 平成9年 港区新橋に三堀法律事務所設立
- 平成14年 三洋投信委託㈱(現プラザアセットマネジメント㈱)監査役就任(平成16年まで)
- 平成15年 千代田区有楽町に事務所を移転
- 平成17年 ㈱ニチリョク監査役就任(平成29年まで)
- 令和6年 三堀法律事務所が丸ビル綜合法律事務所と合併
事務所概要
Office Overview
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