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飲食店開業時及び新サービス開始時に押さえておくべき風営法のポイント

飲食店は,店構え(営業所の構造設備)やスタッフに変わりがなくても,営業スタイルやサービス内容により風営法上の種別が異なってしまい,許可が必要だったり,届出だけでよかったり,届出さえ不要であったりします。

このため,飲食店開業時には風営法上の営業の種別を押さえたうえで営業スタイルやサービス内容を決めたうえ,開業後にこれらを変更する場合にも風営法との関係を慎重に見極める必要があります。

風営法の規制対象としての飲食店の位置付け

 

風営法の規制対象には、公安委員会による許可が必要な「風俗営業」(同法2条1項1号~5号)及び「特定遊興飲食店営業」(同法2条11項),公安委員会に届出さえすればよい「性風俗関連特殊営業」(同法2条5項)及び「深夜における酒類提供飲食店営業」(同法33条),届出も不要な「深夜における飲食店営業」(酒類を提供しないものに限る。同法32条),「興行場営業」(同法35条),「特定性風俗物品販売等営業」(同法35条の2)及び「接客業務受託営業」(同法35条の3)があります。

これらに該当しない営業スタイルやサービス内容であれば,風営法の規制対象外となります。

許可の要否~接待~

 

飲食店のうち許可制の「風俗営業」となる「接待飲食 営業」には,下記が含まれます。

 

  1. 接待飲食営業
    キャバレー,待合,料理店,カフェーその他設備を設けて客に遊興又は飲食をさせる営業」(風営法2条1項1号)~待合とは貸席,料理店とは料亭でいずれも芸妓等を呼んで接待もさせる。
  2. 低照度飲食店
    喫茶店,バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で,…営業所内の照度を10lux以下のとして営むもの(同項2号)
  3. 区画席飲食店
    喫茶店,バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で,他から見通すことが困難であり,かつ,その広さが5㎡以下である客席を設けて営むもの(同項3号)~同伴喫茶等。

 

風俗営業以外でも許可制の「特定遊興飲食店営業」ナイトクラブその他設備を設けて客に遊興させ,かつ客に飲食をさせる営業(酒類を提供して営むものに限る。)で,午前0時~午前6時の時間帯すなわち深夜においても営業するものがあります(風営法2条11項)。

届出制の「深夜における酒類提供飲食店営業」は,上記いずれにも該当しないが午前0時~午前6時の深夜の時間帯で酒類を提供する営業であり,許可も届出も不要だが規制対象にはなる「深夜における飲食店営業」(酒類を提供しないものに限る)があります。

このように,営業のスタイルによって,許可が必要だったり,届出だけでよかったり,届出さえ不要であったりしますから,先ずは,営業スタイルがどれに当てはまるのか,をはっきりさせなければならないのです。

接待飲食営業

 

先述のとおり,風営法上、許可制の「接待飲食 営業」の中の「接待飲食営業」,「低照度飲食店」及び「区画席飲食店」と,届出制の「深夜における酒類提供飲食店営業」,更には許可も届出もいらない通常の飲食店とは,「接待」の有無というサービス内容により区分けされます。

「接待」とは「歓楽的な雰囲気を醸成する方法により客をもてなすこと」をいいます。

典型的なものは,ホストやホステスが異性の客の席に侍って談笑しつつ酒食を勧めたりする行為ですが,以下の基準から判断されます。

 

  1. 談笑・お酌等
    お酌をしたり水割りを作るがすぐにその場を立ち去ったり,客の背後やカウンター内から単に給仕するだけだったりした場合,社交儀礼上の挨拶を交わしたりしても接待には当たりません。
  2. ショー等
    個室やボックス席等の区画された場所で,特定の客だけのために歌や舞踊等を披露する場合は該当しますが,ステージで不特定の客に対してこれらを披露する場合は該当しません。
  3. 歌唱等
    デュエット曲を一緒に歌ったりする他,特定の客が歌うのに手拍子や拍手をしたりすると該当しますが,ステージでカラオケを歌う場合は該当しません。
  4. ダンス
    特定の客と一緒に踊ったりすると接待に該当しますが,ダンス教授する十分な能力を有する者が,その技能及び知識を修得させる目的でダンスを教授する行為は該当しません。
  5. その他
    客と身体を密着させる,手を握る等の行為は該当しますが,社交儀礼上の握手,酔客に対する介抱や,コート等を着脱させる行為は該当しません。

 

従前,客の席に付かずにカウンター越しに客の相手をしている限り「接待」にはならないとの誤った解釈が広まり,カウンター越しで客の相手をしていたガールズバーやコンセプトカフェが無許可の接待飲食営業として摘発されております。

カウンター越しであってもスタッフの指名ができたり,特定の客の売上が女性スタッフ毎に計上・管理されていたりするシステムがあると,客観的に接待があると判断されてしまいます。

バーの場合,接待なしの一定以上の明るさの照明のある見通しの良い店であれば風営法上許可は不要で,深夜に営業する場合に届出が必要となるだけです。

しかし,例えばスタッフが客席に侍って談笑したりすると風俗営業の許可が必要となるうえ,深夜の営業は禁止されることになります。

ゲームセンター等営業

 

最近のポーカーゲームブームを反映して,アミューズメントポーカーと呼ばれる飲食店とポーカーゲーム場を兼ねた店舗が目に付くようになりました。

アミューズメントポーカーは,風営法上「スロットマシン,テレビゲーム機その他の遊技設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるもの…を備える店舗その他これに類する区画された施設…において当該遊技設備により客に遊技をさせる営業」とされる「遊技場営業~ゲームセンター等」に該当します(同法2項1項5号)。

すなわち,ポーカーテーブルやバカラテーブルも「遊技設備」に該当し,「ゲームセンター等」として風俗営業としての許可が必要になりますが,規制の枠にはいらないものがあります。

先ず,ホテル又は旅館,大規模小売店舗,遊園地の内の,外から容易に見通すことができる区画された部分で営業する場合には許可は不要とされます(風営法施行令1条)。

また,遊技設備設置部分が店舗内の客の用に供される部分の床面積の10%に満たない小規模なものについては,「当面…風俗営業の許可を要しない扱いとする。」(解釈運用基準大3‐3⑴イ)とされています。

要するに,遊技設備設置部分(当該遊技設備の直接占める部分の3倍(1.5㎡未満のときは1.5㎡)として計算されます。)が客室の10%未満であれば,風俗営業の許可が不要であり,また,風俗営業には禁止されている深夜における営業も可能となるのです。

ディーラー1名+プレイヤー9名の大型のポーカーテーブルが2.4m×1.4m=3.36㎡とすると,その3倍は10.08㎡(3坪=畳6畳分より少し大きいくらい)となりますから,客室が100.8㎡(概ね30坪超)を少し超える大箱の店なら,許可なしでポーカーテーブルを1台だけを置くことができることになります。

なお,ポーカーやバカラでは,ディーラーが「接待」に該当するような行為をしないように注意する必要があります。

まとめ

 

以上,飲食店開業時に押さえておくべき風営法のポイントについて解説しました。

知らず知らずのうちに風営法を守っていないこともあるでしょう。

不安に感じる飲食業の経営者の方は、ぜひ御相談下さい。

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弁護士三堀 清(みほり きよし)

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所属団体
  • 第二東京弁護士会
経歴

昭和32年 生まれ

昭和56年 早稲田大学法学部卒業

昭和60年 司法試験合格平成8年
早稲田大学大学院法学研究科(企業法務専攻)修了

平成9年 港区新橋に三堀法律事務所設立

平成14年 三洋投信委託㈱(現プラザアセットマネジメント㈱)監査役就任(平成16年まで)

平成15年 千代田区有楽町に事務所を移転

平成17年 ㈱ニチリョク監査役就任(平成29年まで)

令和6年 三堀法律事務所が丸ビル綜合法律事務所と合併

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